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遺産を相続したくないときはどうすればいい?相続放棄について解説!

相続の対象となる財産には、借金などのマイナスの財産も含まれます。

遺産の整理をしていくうちに、どれくらい借金があるかどうかわからなくなったり、引き継ぎたくない財産が見つかったりと、相続をしたくなくなる場合も考えられます。

また、様々な事情により、相続に関わりたくないというケースもあるでしょう。

このような場合に、相続放棄という手段を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

本記事では、相続放棄とはどういうものか、またどのような場合に選択した方がよいか、わかりやすく解説していきます。

この記事を読むとわかること
  • 相続放棄を検討した方がいいケース
  • 相続放棄の手続きの流れ
  • 相続放棄を行う場合の注意点

1.遺産相続の方法

相続が発生した際、相続人には次の3つの選択肢があります。

  • 単純承認
  • 相続放棄
  • 限定承認

このうち、「単純承認」を選択した場合、プラスもマイナスも含めてすべての財産を相続することとなります。

特別な手続きなどは必要なく、もっとも一般的な相続の方法ですが、思わぬ借金などが見つかった場合には、その負債も相続してしまいます。

相続財産の調査をした結果、借金や連帯債務などのマイナスの財産が見つかった場合などに、今回説明する「相続放棄」を検討することとなります。

2.相続放棄とは

「相続放棄」とは、被相続人の財産に対する相続権の一切を放棄することを言います。相続放棄を選択すると、「初めから相続人ではなかった」という扱いになります。

放棄の対象となるのは被相続人のすべての財産であり、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。

相続放棄のメリットとデメリット

相続放棄をすることによって得られるメリットは次のとおりです。

  • 負債の方が多い場合、相続することによって被る不利益を避けられる
  • 遺産分割などによる相続人間の争いに巻き込まれなくてすむ

一方、相続放棄をすることによるデメリットは次のとおりです。

  • 財産調査を十分に行わず、後でプラスの財産が見つかった場合に損をする可能性がある
  • 他の相続人にしわ寄せがいく可能性がある

このように相続放棄にはメリットとデメリットがあるため、判断する際には誰が相続人になるのか、また被相続人の財産をよく調査することが重要です。

相続放棄が有効なケース

相続放棄が有効であるケースには、大きく分けて次の2つのパターンが考えられます。

  • 明らかに負債が多い場合
  • そのほかの場合

順番に見ていきましょう。

①明らかに負債が多い場合

これまでも述べたとおり、相続放棄を選択するとプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

このため、被相続人が莫大な借金を残しており、プラスの財産だけではとても返済しきれない場合、あるいは調べても出てこない負債のリスクを避けたい場合などには、相続放棄をすることで相続による損害を回避することができます。

②そのほかの場合

相続放棄を検討するケースとしては①が多いですが、そのほかには次のような場合が挙げられます。

  • 相続の問題に一切かかわりたくない場合
  • 事業承継など、被相続人の財産を特定の相続人にすべて承継させたい場合
  • 価値があっても相続したくない財産がある場合

相続放棄を慎重に判断した方がいいケース

相続放棄を選択した場合、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することとなります。

このとき、万が一プラスの財産がマイナスを上回っていると、損をしてしまうこともあり得ます。

相続財産のうち、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合などに、「限定承認」が有効になることがあります。

限定承認について

「限定承認」とは、相続財産に資産と負債が混在する場合、負債を資産の額の範囲内に限定して相続する方法です。

つまり、プラスの財産を超えない範囲に限って、マイナス財産を相続するということになります。

ただし、注意点として、限定承認はすべての相続人が共同で行わなければなりません。

このため、誰が相続人であるかすべて分かっており、その上で全員の協力が得やすい関係性でない限り、手続きが困難になる可能性があります。

相続人のうち、一人でも反対する者がいると手続きができず、また税制面でも不利になることがあるため、実際に限定承認手続きが選択されることは稀です。

3.相続放棄の手順

続いて、相続放棄を行う際の手続きの流れを解説していきます。

①熟慮期間内に相続放棄をするかどうか決定する

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内に、単純承認、限定承認又は相続放棄をしなければなりません。

この期間のことを「熟慮期間」と呼びます。

被相続人の財産を念入りに調査し、熟慮期間内に相続放棄をするかどうか決定しましょう。

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熟慮期間を伸ばしたい場合

熟慮期間内に検討をしても、相続財産の調査が難航している場合や、所在がわからない相続人がいるなどの事情があり、どうするかすぐに決定できないときには、家庭裁判所に申立をすることで熟慮期間を延長することができます。

家庭裁判所では、相続財産の複雑さや相続人の状況などをはじめとした様々な要素を考慮し、延長を認めるかどうか判断します。

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熟慮期間を過ぎてしまった場合

3か月の熟慮期間を過ぎてしまうと、相続放棄をおこなうことは非常に難しくなります。

しかし、事情によっては相続放棄を認めてもらえる可能性がゼロではありません。

裁判所HPでは、相続放棄は原則として期限内に行う必要があるとしながらも、その例外について記載があります。

例外が認められているとはいえ、期限を過ぎてからの相続放棄が認められるかどうかは、家庭裁判所の判断によります。

そのため、万が一熟慮期間を過ぎてしまっているかもしれないと思うときは、早急に専門家に相談することをおすすめします。

②必要な書類を用意する

相続放棄に必要な書類は次のとおりです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申立人の戸籍謄本

相続放棄申述書とは、相続放棄する際に家庭裁判所に提出しなければならない書類のことです。

申述書は全国の家庭裁判所で入手できるほか、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

なお、成年と未成年者では書き方が異なりますので、注意してください。

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相続人が未成年者又は成年被後見人である場合

相続人が未成年者又は成年被後見人である場合には、その法定代理人が代理して申述することになります。

また、未成年者と法定代理人が共同相続人であり、両者の利害が対立するような場合や、未成年の共同相続人間で利害が対立するようなケースでは、法定代理人が代理権を行使することができず、当該未成年者について特別代理人を選任する必要があります。

また、上記書類に加えて、申立人によって次の書類なども必要です。

申立人が配偶者の場合
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
申立人が子や孫(代襲者)の場合
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
  • 申立人が孫の場合、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
申立人が両親や祖父母(直系尊属)の場合
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
  • 被相続人の子で死亡者がいれば、その子の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属に死亡者がいれば、その者の死亡の記載のある戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
申立人が兄弟姉妹や甥姪の場合
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
  • 被相続人の子で死亡者がいれば、その子の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本
  • 申立人が甥姪の場合、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改正原戸籍)謄本

③必要書類を家庭裁判所に提出する

相続放棄の申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

提出は次の2通りです。

  • 家庭裁判所へ直接持ち込んで提出
  • 郵送で提出

④照会書に回答する

家庭裁判所へ相続放棄を申し立てると、家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が送付されてきます。

照会書に同封されている回答書に回答事項を記入して、指定された期限に間に合うように返送します。

⑤相続放棄申述受理通知書を受け取る

無事に相続放棄が認められた場合、家庭裁判所から「相続放棄受理通知書」が送られてきます。

⑥(必要に応じて)相続放棄申述受理証明書を請求する

相続放棄申述受理証明書とは、相続放棄をしたことを第三者に証明するための書類で、裁判所に交付申請することで何度でも発行することができます。(発行には1通ごとに150円の手数料がかかります。)

相続放棄申述受理証明書は、債権者に相続放棄の通知をする場合、銀行に相続放棄を証明する場合や、他の相続人が相続登記をする場合などに使用することがありますので、状況に応じて発行の請求を行いましょう。

⑦(必要に応じて)債権者に相続放棄した旨通知する

相続放棄の対象となる財産に負債がある場合は、債権者に対して相続放棄したことを通知します。

この際、上述の「相続放棄申述受理証明書」が必要になる場合があります。

4.相続放棄が認められないケース

通常、熟慮期間内に行った相続放棄の申述が却下されるケースはあまりありません。

しかし、民法で定められている「単純承認事由」とみなされる行為を行った場合、相続放棄は認められません。

たとえば次のようなケースです。

  • 相続人が相続財産の全部、または一部を処分した場合
  • 相続人が相続財産の全部、または一部を隠匿、消費した場合

また、相続開始から3ヵ月以内に相続放棄または限定承認をしなかった場合にも、単純承認をしたとみなされます。

5.相続放棄の注意点

相続放棄をするに当たり、気を付けるべき注意点をいくつかご紹介します。

①相続開始前には相続放棄できない

相続放棄は相続開始後に家庭裁判所に対して申述することで成立します。

家庭裁判所では、相続開始前には相続放棄を受け付けていません。このため、相続開始前に相続放棄をすることはできません。

②相続人全員が相続放棄をした場合

相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったことになりますが、その後、法定の相続順位に従い、相続人になる人が変わっていきます。

もしすべての法定相続人が相続放棄をした場合で相続財産管理人の申立をした場合、最終的に財産がプラスとなるのであれば、その財産は「特別縁故者」がいない限り、すべて国のものになります。一方で、財産がマイナスになる場合、債務者が消滅するため債権者の権利は当然に失われます。

③相続放棄と代襲相続

相続放棄を原因として、代襲相続が起こることはありません。

たとえば、「母親が死亡して配偶者と子が相続人となった」ケースにおいて、すでに子が亡くなっていれば、子に孫がいる場合、孫が代襲相続します。

しかし、このケースで子が相続放棄をしたという場合、孫は法定相続人にはなりません。

④生命保険などの取り扱い

被相続人が生命保険契約をしており、その受取人として特定の相続人が指定されていることがあります。このとき、生命保険金は受取人として指定されている相続人の固有の財産とされ、相続財産には含まれません。

このため、受取人指定されている相続人が相続放棄をしたとしても、生命保険金は受け取ることが可能です。

一方、被相続人が生命保険金の受取人を自分自身として指定している場合、保険金支払請求権は被相続人の財産ということになるため、相続の対象となります。

また、被相続人が積立式の生命保険を契約しており、被相続人の死亡に伴って解約返戻金が支払われる場合、この解約返戻金は契約当事者である被相続人に対して支払われるものであるため、相続の対象となります。

もし被相続人の財産となる解約返戻金などを相続人が使ってしまったり処分したりすれば、それは単純承認事由となり、その後は原則として限定承認や相続放棄ができなくなりますので注意しましょう。

6.まとめ

相続放棄をうまく活用することで、相続による不利益を回避できたり、相続人同士の問題に巻き込まれずに済んだりします。

一方で、相続放棄をするかどうかの判断に当たっては、相続人や相続財産の調査を慎重に行う必要があります。3ヵ月という期間内に、日常の生活を送りながら調査や手続きをすることは困難を伴うことも考えられます。

このため、少しでもわからないことや不安なことがあれば、期限が迫る前に専門家へ相談することをおすすめします。早めに手を打つことで、ご自身やご家族にとってより良い選択をすることに繋がります。

いちはら法務事務所では、相続手続き全般に精通した司法書士が、皆様の悩みに寄り添ってサポートいたします。

相続放棄に関するご依頼にも対応しておりますので、些細な悩みと思われることであっても、お気軽にご相談ください。

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